映画『水は海に向かって流れる』ネタバレ感想|広瀬すず・大西利空の演技と結末の考察、主題歌の余韻

映画『水は海に向かって流れる』ネタバレ感想|広瀬すず・大西利空の演技と結末の考察、主題歌の余韻
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こんにちは、yasuです。

雨の降る駅前、不機嫌そうな大人の女性と、戸惑う高校生の偶然のような必然の出会い。そこから静かに幕を開ける物語は、僕たちの心の奥底にある澱をゆっくりと洗い流してくれるような、特別な引力を持っています。

今回は、田島列島さんの同名コミックを実写化した映画『水は海に向かって流れる』について、じっくりと感想と考察を綴っていきます。実は、原作コミックはまだ未読の状態で鑑賞に臨みました。

しかし、映画単体として非常に完成度が高く、事前情報なしでも深く心に刺さる、本当に素晴らしい作品でした。過去のトラウマや複雑な人間関係に悩み、心が少し疲れてしまっている方にこそ、ぜひ届いてほしい物語です。

映画の基本情報と、広瀬すず・大西利空が魅せる対照的な演技

本作のメガホンを取ったのは、『そして、バトンは渡された』などで知られる前田哲監督です。血の繋がりにとらわれない「非伝統的な家族」の形や、不器用な人々が織りなす温かさを描く手腕は、本作でもいかんなく発揮されています。

この作品の最大の魅力は、なんといっても主演の広瀬すずさんと、相手役を務める大西利空さんの見事なコントラストにあります。ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』や数々の映画で目覚ましい活躍を続ける広瀬すずさんは、本作において、過去の傷から恋愛を遠ざけ、どこか達観した会社員・榊千紗を見事に演じきっています。

感情の起伏を押し殺したような静かな佇まいの中に、ふとした瞬間に漏れ出る微かな心の揺らぎを表現する様は、まさに圧巻の一言です。一方、ドラマ『スカイキャッスル』、そして直近では『リブート』最終話への出演などで実力をメキメキと伸ばしている大西利空さんは、主人公の高校生、直達役として、非常にフレッシュで真っ直ぐな演技を見せてくれます。

この千紗の「達観」と、直達の「純粋さ」。交わるはずのなかった二つの個性の対比が、停滞していた物語の歯車を少しずつ、しかし確実に動かしていく最大の原動力となっています。

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重たい題材を優しく中和する、シェアハウスの住人たちと猫のムーちゃん

本作の根底にあるのは、少し複雑で重たい人間関係のテーマです。しかし、映画全体を通して不思議とそこまで深刻なトーンにならず、むしろ心地よいテンポで物語が進んでいくのが非常に良い塩梅だと感じます。

その理由は間違いなく、二人が暮らすシェアハウスに集う、少し変わっているけれど底抜けに温かい住人たちのおかげです。変わりものの教授の賢三(生瀬勝久さん)や、常にマイペースで女装して占いをする颯(戸塚純貴さん)、そして、シェアハウスの住人ではありませんが、颯の妹であり直達の同級生の楓(當真あみさん)など、彼らの存在が物語に軽やかなリズムとユーモアを生み出しています。彼らは互いの過去に深く干渉しすぎることはありませんが、必要な時にはそっと寄り添う絶妙な距離感を保っています。

そして忘れてはならないのが、シェアハウスのアイドル的存在である猫のムーちゃんです。気まぐれに歩き回り、登場人物たちの傍らで丸くなるその姿は、とにかく可愛くてたまりません。登場人物たちがシリアスな悩みを抱えている場面でも、ムーちゃんが画面の隅にいるだけで、僕たちの張り詰めた心までフッと軽くなるような見事な癒やし効果をもたらしてくれています。

心の澱を豪快に流す名物「ポトラッチ丼」の成り立ちと意味

劇中に登場するシェアハウスの名物料理として、「ポトラッチ丼」という非常にインパクトのあるメニューが登場します。豪快に調理されたお肉がたっぷりと乗ったこの丼ぶりは、ただ視覚的に美味しそうというだけにとどまりません。

「ポトラッチ」とは元々、北米の先住民族の言葉で「贈り物」という意味らしく、富を気前よく分け与えたり、時には意図的に破壊したりすることで、自身の社会的な地位や寛大さを示すという文化的な背景を持っています。

劇中においてこのポトラッチ丼は、ただ空腹を満たすための食事ではなく、過去の嫌な思い出や行き場のない感情を、皆で豪快に食らい尽くして昇華させるための「前向きな儀式」として描かれています。一人で抱え込みがちな辛い感情も、誰かと一緒に美味しいものを囲み、笑い合いながらお腹に入れることで、少しだけ消化しやすくなるものです。そんな、食を通じた温かいメッセージが、この丼ぶりには込められています。

Warning

ここから先は、物語の核心に触れるネタバレが含まれます。

まだ作品をご覧になっていない方は、ここで前のページに戻るか、視聴後に改めてお読みいただくことをおすすめします。

親の過ちという十字架と、向き合う二人の不器用な歩み

千紗が常に不機嫌を装い、感情を固く閉ざしている理由は、10年前に起きた直達の父と千紗の母による「W不倫」という過酷な過去にありました。

直達は、その事実を全く知らずに「加害者の息子」として、被害者の娘である千紗の前に現れてしまったことになります。直達自身には何の罪もないにもかかわらず、彼は親の自己中心的な過ちによる、重い代償的罪悪感に苛まれることになります。

千紗はこの10年間、自分の中にある怒りや悲しみ、そして誰かを愛したいという自然な感情を、強固な心のダムで強引に堰き止めてきました。しかし、直達という嘘偽りのない真っ直ぐな存在が彼女の日常に降り注ぐことで、そのダムは少しずつ限界を迎えます。

若さゆえの無神経さで踏み込んでくる直達の言葉は、傷ついた千紗にとって時に残酷に響くこともありました。しかし、その逃げずに真正面からぶつかってくる純粋さが、停滞して淀んでいた千紗の時間を再び動かし始める決定的な契機となったのです。過去の傷は消えませんが、それに向き合う二人の姿には、確かな希望の光が宿っています。

最後の告白と、無限の未来への想像を掻き立てる絶妙な結末

過去のトラウマと不器用に向き合った末に訪れるラストシーン。直達から千紗への、ある種無謀とも言える真っ直ぐな告白は、観る人によって様々な受け取り方ができる、非常に文学的で絶妙な描かれ方をしていました。

その告白は、映画的な分かりやすい「大成功」としては描かれていません。結果は描かれることなく暗転し、そのままエンドロールと繋がってしまいます。大人の女性と高校生の恋愛。少なくとも結果としては、上手く躱されてあしらわれたのではないかなって想像できました。しかし、直達の言葉を聞いた直後の千紗の表情からは、長年抑え込んでいた感情が解き放たれ、隠しきれないほどの嬉しさと安堵が込み上げているのがはっきりと伝わってきました。

この「すぐに恋人同士として結ばれるわけではない」かもしれないという距離感こそが、本作のリアリズムであり、最大の誠実さなのだと思います。二人の関係性はとてつもなく複雑で、簡単に付き合うという魔法のような結果になるものではありません。

数年後、もしかしたら二人は付き合うことになるかもしれません。そしてさらに数年後には別れるかもしれないし、また何年か経ってよりを戻すかもしれない。そんな未来の無限の可能性を延々と想像してしまうくらい、とてもさわやかで、前を向く勇気をくれる結末でした。

スピッツの主題歌『ときめきpart1』がもたらす、視聴後の極上な余韻

映画のラストを飾り、エンドロールと共に流れるのは、スピッツによる書き下ろしの主題歌『ときめきpart1』です。この温かくも切ない楽曲が流れ出した瞬間、物語の感動と余韻が何倍にも膨れ上がっていくのを感じました。

草野マサムネさんが紡ぎ出す歌詞は、まるで千紗の長年封じ込めていた心境そのものを、優しく代弁しているかのようです。過去の絶望に縛られ、未来の幸せを諦めていた彼女が、再び誰かに「ときめく」ことを自分自身に許容していく過程が見事に表現されています。

劇中の爽やかな余韻をそのまま引き継ぎ、視聴者の背中まで優しく押してくれるこの主題歌の存在は、映画の完成度をさらに高める素晴らしい相乗効果をもたらしています。視聴し終えた後も、しばらくこの優しいメロディが頭から離れませんでした。

まとめ:心に溜まった水を、再び海へ流すための温かい物語

タイトルにある『水は海に向かって流れる』という言葉には、人間の力では決して押しとどめることのできない「感情の奔流」と「時間の不可逆性」という意味が込められているのだと思います。

どんなに辛い過去があって、自分を守るために感情をせき止めたとしても、生きて誰かと関わり続ける限り、心の中の「水」は再び流れ始めます。そしてそれは、いつかすべての過去を清濁併せ呑む、広大で優しい「海」へと辿り着き、浄化されていく。

もし、過去の出来事や人間関係に縛られて、次の一歩を踏み出せずにいる方がいたら、ぜひこの映画に触れてみてください。ネガティブな感情やトラウマを優しく解きほぐし、ポジティブな未来へと繋げてくれる、本当に素晴らしい作品です。鑑賞後はぜひ、劇中のポトラッチ丼のように、誰かと美味しいものを一緒に食べながら、前向きな明日について語り合ってみてはいかがでしょうか。

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Wrote this article この記事を書いた人

yasu

yasu

YASU GAME LIFE CHANNELのyasu本人によるブログです。乙女ゲーム好きな実況者です。皆と居心地の良いストレスのない場所を作るのが目標です。今までの動画・ライブ配信のまとめだったり、日々の想いを綴ります。 ※当ブログはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を掲載することがあります。

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