映画『ファーストキス 1ST KISS』ネタバレ感想と考察。松たか子と松村北斗が描く夫婦の絆

映画『ファーストキス 1ST KISS』ネタバレ感想と考察。松たか子と松村北斗が描く夫婦の絆
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こんにちは、yasuです。

映画館の客席の明かりが点いても、僕は涙が止まらず、しばらくの間そこから立ち上がることができませんでした。スクリーンに映し出された不器用な夫婦の姿に、ただただ大号泣してしまったからです。

先日、Amazonプライムビデオでも配信が開始されたことを機に、自宅で改めて視聴しました。結末を知ってから見直すと、冒頭の何気ないシーンに込められた意味がより深く胸に迫り、相変わらず素晴らしい映画だと心から感じます。本作『ファーストキス 1ST KISS』は、原作なしの完全オリジナルストーリーとして生み出された恋愛映画です。

今回は、シナリオブックまで買ってしまったほど僕の心に深く刻まれたこの傑作について、ネタバレなしの領域と、物語の核心に触れるネタバレありの領域を明確に分けて、じっくりと語っていきます。

日本を代表するクリエイターとキャストが紡ぐ日常

本作の最大の魅力は、日本最高峰のスタッフとキャスト陣が結集し、どこにでもある夫婦の日常を極めて繊細に描き出している点です。脚本を手掛けたのは、緻密な会話劇で人間の本質を浮き彫りにする坂元裕二さん。そして監督は、登場人物の感情の揺れを丁寧な演出で掬い取る塚原あゆ子さんです。この二人がタッグを組んだことで、本作は圧倒的な説得力を持つ作品へと昇華されました。

主人公の硯カンナを演じるのは松たか子さん、夫の硯駈を演じるのは松村北斗さんです。結婚15年目を迎え、すっかり関係が冷え切ってしまって離婚することが決まっている現在と、15年前の瑞々しい出会いの季節を行き来する難しい役どころですが、お二人の演技が本当に秀逸です。視線の動かし方や声のトーンひとつで、積み重ねてきた歳月の重みを見事に表現されていました。

また、物語を優しく、時に切なく包み込む音楽も忘れてはいけません。岩崎太整さんが手掛ける劇伴音楽と、優河さんが歌唱するエンディングテーマ「next to you」が、登場人物たちの言葉にならない感情の揺れに静かに寄り添い、僕たちの涙腺を静かに刺激します。

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3年待ちの餃子が象徴する、夫婦の現在地

物語は、ある日自宅に「3年待ちの餃子」が届く冒頭のシーンから静かに幕を開けます。届いた餃子をカンナがうまく焼けずに焦がしてしまう描写は、すれ違い、ささくれ立ってしまった夫婦の日常や心の荒みを象徴しているようで、見ていて少し胸が痛みます。

かつては一緒に食べることを楽しみにしていたはずの餃子が、今はただの焦げた塊になってしまう。そんな何気ない生活のディテールに、関係性の破綻がリアルに描かれています。しかし、この焦げた餃子がもたらす痛みが、物語の結末に向けてどのように大きな温かさへと変わっていくのか。それこそが、本作が持つ最大の魔法です。

Warning

ここから先は、物語の核心に触れるネタバレが含まれます。

まだ作品をご覧になっていない方は、ここで前のページに戻るか、視聴後に改めてお読みいただくことをおすすめします。

愛しているからこそ突き放す、切なすぎる嘘

不慮の事故で夫の駈を失ったカンナは、過去へと戻り、まだ自分と出会っていない駈と再会します。そこで彼女は、駈が15年後に事故死するという残酷な運命を回避するため、様々な行動を取ります。しかし、未来は変わらずことごとく失敗。物語の中盤、気付きます。あえて自分と結婚しない未来を作れば、駈の事故死は回避できるはずだと。

その過程で、カンナが駈を遠ざけるために投げかける言葉があります。「この世で一番いやなことは、好きじゃない人から好きって言われること」

自分が最も愛している人に対し、そして未来を救うためとはいえ、これほどまでに辛く鋭い言葉をぶつけなければならないカンナの姿は見ていて本当に苦しくなります。そして、その言葉を真正面から受け止めた時の駈の表情。深く傷つきながらも、どこか彼女のすべてを受け入れようとするあの切ない眼差しは、僕の脳裏に焼き付いて忘れられません。悲しい嘘ですが、それは相手の命を守りたいという自己犠牲を伴う深い愛情の裏返しであり、人を思うことの果てしない尊さを教えてくれます。

恋愛と結婚の違い、そして夫が選んだ誇らしい未来

劇中で語られる「恋愛は好きを見つける行為、結婚は嫌いを見つける行為」という言葉は、長く共に過ごす夫婦にとって非常に考えさせられる真理です。カンナは駈に対して、未来の結婚生活が完全に破綻していたという事実を赤裸々に伝えます。嫌いな部分ばかりが目につき、関係が終わっていたのだと。

しかし、その事実を知った上で、駈はカンナに伝えます。たとえ未来で破綻するとしても、自分はカンナと結婚したいのだと。彼は、自分が死ぬという運命を回避することよりも、カンナとの15年間の結婚生活をやり直したいと願うのです。

結局のところ、彼が命を落とすという未来そのものは変えられませんでした。過去に戻るという非現実的なファンタジーの構造を持ちながら、最終的に「死という絶対的な運命は決して覆せない」という残酷なまでにリアリティのある現実が、そこには横たわっています。

それでも、過去をやり直したことで、二人が過ごした15年間の結婚生活の意味合いは劇的に変わりました。死を回避することよりも、愛する人との不器用な時間を選んだ駈の決断。それは本当に切なく悲しい選択ですが、一人の男として、そして夫として、なんだかとても誇らしい気持ちにさせてくれるのです。

一人残される痛みと、手紙に綴られた真実

一方で、やり直したことで幸せな記憶を胸に刻み、その上で一人になってしまったカンナの今後を思うと、この選択が必ずしも正しかったとは言い切れない部分もありました。関係が破綻し、心が離れていたからこそ、夫を失った圧倒的な悲しみに耐えることができていたという側面もあると思うからです。愛が深まれば深まるほど、喪失の痛みもまた計り知れないものになります。

それでも、亡くなった後に駈が遺した手紙を見つけた時、そこには彼がどれだけこの15年間幸せだったかが綴られていました。その手紙は、カンナの抱える深い悲しみを、少しずつ温かい光で照らしてくれます。

死ぬ運命だったからこそ、カンナは過去へ行き、駈と真っ直ぐに向き合うことができました。もしあの運命がなかったら、二人は本当の意味で心を通わせることはなかったかもしれません。だからこそ、駈は死ぬ運命から目を背けず、正面から向き合ったのだと思います。

手紙と餃子、最後に残された「ありがとう」

物語の最後、冒頭と同じように、再び自宅に3年待ちの餃子が届きます。それは3年前、関係が最も冷え切っていたあの最悪の世界線であっても、駈がカンナと一緒に食べたいと願い、密かに注文していたものでした。

物理的な時間や生と死の境界を超越して届いた夫の愛情を受け取り、彼女が最後に発した言葉。それが「ありがとう」でした。喪失の悲しみを抱えながらも、相手からの深い愛情を受信し、感謝とともに前を向いて生きていく力強さが、このたった一言にすべて込められています。ネガティブな後悔から始まった物語が、最後にはこれ以上ないほどのポジティブな愛の肯定へとたどり着くのです。

夫婦という関係を見つめ直す、すべての人へ

この作品は、夫婦というのは一体何か、誰かと共に生きるとはどういうことかを、僕たちに深く問いかけてきます。夫婦仲が円満で幸せな日々を送っている人はもちろん、今まさにパートナーとの関係に悩んでしまっている人も、ぜひお二人で見てほしいと心から思います。

言葉を交わし、同じ食卓を囲むという何気ない時間の奇跡に気づくことで、何かが良い方向へ変わる素晴らしいきっかけになるかもしれません。悲しい現実を受け入れながらも、今隣にいる人を全力で大切にしようと思える、そんな温かいエネルギーをもらえる映画です。

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Wrote this article この記事を書いた人

yasu

yasu

YASU GAME LIFE CHANNELのyasu本人によるブログです。乙女ゲーム好きな実況者です。皆と居心地の良いストレスのない場所を作るのが目標です。今までの動画・ライブ配信のまとめだったり、日々の想いを綴ります。 ※当ブログはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を掲載することがあります。

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