こんにちは、yasuです。
『空の軌跡』シリーズ、リベール全土を取り巻く、エステルとヨシュアの物語が一区切りついたあとの世界。皆さんはもう体験されましたか?
今回は、シリーズファンなら避けては通れない重要作『英雄伝説 空の軌跡 the 3rd Evolution』のクリアレビューをお届けします。
「ファンディスク的な位置づけなんでしょ?」と侮るなかれ。ここには、後の『零』や『碧』、そして『閃』へと繋がる重要なミッシングリンクと、涙なしには見られない真実が隠されています。
やりごたえ抜群!探索の自由度を変えた「ボリューム」の魔術
本作のクリアまでのプレイ時間は、メインストーリーとサブイベントを網羅して概ね40時間〜50時間ほどです。「軌跡シリーズとしては標準的か、少し短め?」と感じる方もいるかもしれません。確かに、本作は広大な世界を歩き回る従来のスタイルとは異なり、「影の国」という巨大ダンジョンを攻略していく一本道の形式をとっています。
一見すると「街を巡る旅情がなくて単調」というネガティブな印象を受けがちですが、裏を返せば「移動の手間を極限まで削ぎ落とし、バトルと育成、そして物語の摂取に全振りできる」という最大のメリットでもあります。Evolution版ならではの倍速機能や快適なUIも相まって、密度の濃い時間を過ごせます。
特に、「扉」と呼ばれるサブエピソード群のボリュームが凄まじく、これらを解放していく過程そのものがメインコンテンツと言っても過言ではありません。無駄な移動時間をカットした分、純粋なゲーム体験としての満足度は非常に高く、結果として数字以上の圧倒的な「濃さ」を感じられるボリュームになっています。

ファンディスクの枠を超えた「ゲーム内容」の深み
本作の主人公は、前作SCで強烈な印象を残した「ケビン・グラハム神父」。物語は、FCとSCで一定の結末を迎えた『空の軌跡』の「その後」を描くエピローグであり、同時に次なる軌跡シリーズへのプロローグでもあります。
基本システムは、拠点を中心に各階層のダンジョンを攻略していくスタイルです。「また同じようなダンジョンの繰り返し?」と不安になるかもしれませんが、この閉鎖空間という設定だからこそ実現できたのが、「パーティメンバーの集結」と「徹底的なキャラクターの深掘り」です。
本作最大の特徴は、ダンジョン内で発見する「記憶の扉」。ここでは、エステルやヨシュアをはじめ、クローゼ、オリビエ、ジンといった主要キャラたち、そしてFC、SCで立ち塞がったキャラたち、一人一人に焦点を当てたショートストーリーがフルボイスで展開されます。「あの時、彼らは何を思っていたのか」「過去に何があったのか」。本編では尺の都合で語りきれなかった裏設定や後日談が、これでもかというほど詰め込まれています。単なるファンサービス(ファンディスク)的な側面に留まらず、キャラクターの人生そのものを補完する、ファン必見のバイブルのような内容となっています。

【感想】レンの衝撃と「影」が照らす光の物語
正直に申し上げますと、本作のストーリーはシリーズの中でもかなり「重く、暗い」部類に入ります。特に主人公ケビンの過去や、教会に関わるエピソードはシリアス一辺倒。「明るく前向きな冒険活劇」を期待すると、そのギャップに胸が締め付けられるかもしれません。
しかし、この「影」の部分から目を逸らさずに描いたからこそ、『空の軌跡』という作品は真の名作へと昇華されたと感じます。
中でも特筆すべきは、執行者No.XV「殲滅天使」レンのエピソードです。多くのプレイヤーにトラウマ級の衝撃を与えた彼女の過去。その内容はあまりに壮絶で、言葉を失います。ですが、その深い闇を知ることで初めて、最終的に彼女がエステルたちに見せる笑顔の尊さや、後のシリーズで見せる成長の意味が、痛いほど心に響くようになります。
ネガティブな感情さえも物語の駆動力に変え、最後には「人間への賛歌」として着地させる手腕は見事の一言。ただの追加ディスクではなく、キャラクターたちの魂の救済を描いた、涙なしには語れない傑作でした。

総評:軌跡シリーズを追うなら絶対に避けて通れない「第3の翼」
『空の軌跡 the 3rd Evolution』は、ダンジョン探索型というシステムや、ダークなシナリオ構成ゆえに、シリーズ未経験者が最初に手に取る作品としてはハードルが高いかもしれません。
しかし、FCとSCをクリアしたファンにとっては、「これをやらずして空の軌跡は終われない」と断言できる必須科目です。一見すると蛇足に見えるかもしれない「その後」の物語には、彼らが未来へ進むために必要な儀式が詰まっていました。
システム的な単調さを補って余りあるシナリオの熱量と、Evolution版による遊びやすさ。これからの軌跡シリーズをより深く愛するために、ぜひこの「影の国」の試練を、彼らと共に乗り越えてみてください。
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