【探偵神宮寺三郎レビュー】神宮寺三郎の伝説はここから始まる！新宿中央公園殺人事件

こんにちは、yasuです。

ハードボイルド・アドベンチャーゲームの金字塔として、長きにわたり愛され続けている「探偵 神宮寺三郎」シリーズ。

今回は、その記念すべき第1作目であり、『探偵 神宮寺三郎 アーリーコレクション』にも収録されている『新宿中央公園殺人事件』をレビューします。

ファミコン世代のプレイヤーには懐かしく、今の世代には新鮮に映る「大人の推理アドベンチャー」。その原点となる本作の魅力を、独自の視点を交えてたっぷりとご紹介します。

プレイ時間とボリューム：短編映画のような凝縮された密度

本作のプレイボリュームは、現代のRPGやオープンワールドゲームと比較すると非常にコンパクトです。謎解きのスムーズさにもよりますが、おおよそ3時間程度でエンディングまで到達できるでしょう。

しかし、これは決して「物足りない」ということではありません。むしろ、無駄なレベル上げや広大すぎるマップ移動といった要素がなく、純粋にストーリーと推理だけを濃密に楽しめる構成になっています。忙しい社会人の方でも、週末のまとまった時間でしっかりとクリアまで持っていける、まさに「短編映画」を観るような心地よいサイズ感です。

物語のテンポが非常に良く、中だるみすることなく一気に結末まで駆け抜けることができるため、クリア後の満足感はプレイ時間以上のものを感じさせてくれます。サクッと遊べて、深く心に残る。そんな絶妙なボリューム感が本作の大きな魅力の一つと言えるでしょう。

ゲーム内容：ハードボイルドな世界観とコマンド選択式の妙

物語は、新宿中央公園で人気クラブホステスの絞殺死体が発見されるところから始まります。プレイヤーは私立探偵・神宮寺三郎となり、この事件の真相を解明するために調査を開始します。

ゲームシステムは、アドベンチャーゲームの王道である「コマンド選択式」を採用。「きく」「しらべる」「いどう」といったコマンドを駆使して証言や証拠を集めていくスタイルです。一見シンプルに見えますが、適切な場所で適切なコマンドを選ばなければ物語が進まない場面もあり、プレイヤーの推理力と観察眼が試されます。

特筆すべきは、やはりその圧倒的な「雰囲気」です。新宿のネオン、煙草の煙、そしてジャズの音色。ドット絵でありながら、そこには確かな大人の世界が広がっています。また、時折発生するダンジョン風の探索パートなど、当時のゲームらしい遊び心や緊張感も良いスパイスになっています。現代のゲームのような派手な演出はありませんが、テキストと音楽だけでプレイヤーをハードボイルドな世界へ引き込む力は、発売から数十年経った今でも色褪せていません。

感想：ここからすべてが始まった…ファンの心を揺さぶる原点

本作をプレイして最も感動したのは、やはりこれが「神宮寺三郎のはじまりの事件」であるという歴史的な重みです。シリーズを重ねるごとに渋みを増していく神宮寺ですが、第一作目の本作では、どこか若々しさと野心を感じさせる部分もあり、彼自身の「探偵としての原点」に触れられた気がして胸が熱くなりました。

そして何より見逃せないのが、神宮寺三郎の脇を固める人物の登場です。助手である御苑洋子や、新宿淀橋署の熊野警部といった、シリーズに欠かせないキャラクターたちが、この時点ですでにその存在感を放っています。「ああ、彼らの関係性はここから始まったのか」という感慨深さは、ファンであればあるほど強く感じるはずです。

特に、洋子の献身的なサポートや、熊野警部との信頼関係が垣間見えるシーンは必見です。単なる謎解きゲームとしてだけでなく、キャラクターたちの人間ドラマとして楽しむことで、本作の魅力は何倍にも膨れ上がります。古いゲーム特有の難易度はありますが、それを乗り越えてでも見る価値のある「始まりの物語」がここにありました。

総評：色褪せない名作、ミステリーファンなら一度は体験すべし

『新宿中央公園殺人事件』は、古い作品でありながら、今遊んでも十分に楽しめる良質なミステリーアドベンチャーです。総当たりが必要な場面など、レトロゲーム特有の歯ごたえはありますが、それが逆に「自力で捜査している」という没入感を生んでいます。

シナリオの完成度、キャラクターの魅力、そして独特のハードボイルドな空気感。これらが三位一体となって、プレイヤーを新宿の夜へと誘います。「アーリーコレクション」として手軽に遊べるようになった今こそ、シリーズファンはもちろん、レトロゲームに興味があるすべての方におすすめしたい一作です。神宮寺三郎という伝説の探偵が、どのようにして生まれたのか。その目撃者になる体験は、きっとあなたのゲームライフにおいて特別なものになるはずです。