【レビュー】『夜廻と深夜廻』はホラー苦手でも泣ける？心温まる怪異譚の魅力を徹底解説

こんにちは、yasuです。

「夜の怖さ」を覚えていますか？

可愛らしいキャラクターデザインと、その見た目に反して容赦のない恐怖演出で話題となった日本一ソフトウェアの『夜廻（よまわり）』シリーズ。その1作目と2作目がセットになった『夜廻と深夜廻』は、単なるホラーゲームの枠に収まらない、切なさと懐かしさが詰まった作品です。

今回は、ホラーゲームが得意ではない僕が、恐怖を感じながらもコントローラーを置けずに最後まで駆け抜けてしまった本作の魅力を、ネタバレなしでレビューします。「怖いけど、どこか温かい」そんな不思議な夜の散歩へ出かけてみませんか？

プレイ時間とボリューム：ちょうど良い没入感！長すぎず短すぎずの良い緊張感

本作には『夜廻』と『深夜廻』の2作品が収録されていますが、クリアまでの時間は両作品を合わせても10時間〜20時間ほどと、社会人ゲーマーにも非常に遊びやすいボリュームになっています。

具体的には、初代『夜廻』のメインストーリークリアまでが約5〜8時間、続編の『深夜廻』が約10〜15時間程度です。「少し短いかな？」と感じるかもしれませんが、実際のプレイ密度は非常に濃密です。ダラダラと長く続くのではなく、物語の核心へ向けてテンポよく進むため、中だるみすることなくエンディングまで突き進めます。

もちろん、クリア後のやり込み要素も充実しています。街中に散らばる「収集アイテム」を集めたり、クリア後にしか発生しないサブイベントをこなしたりすることで、物語の背景がより深く理解できるようになります。サクッと遊びたい方から、世界観にどっぷり浸りたい方まで満足できる、絶妙なサイズ感の作品と言えるでしょう。

ゲーム内容：懐中電灯を片手に探索、夜の怖さを体験

本作は、幼い少女を操作して、不気味な夜の街を探索するアクションアドベンチャーゲームです。プレイヤーの目的は、行方不明になった大切な存在（姉や愛犬、親友など）を探し出すこと。

最大の特徴は「武器がない」ことです。プレイヤーができることは「歩く」「走る」「隠れる」、そして「懐中電灯で照らす」ことだけ。街には恐ろしい「お化け」が徘徊しており、彼らに捕まれば即ゲームオーバーという緊張感があります。お化けが近づくと少女の心臓の鼓動がドクン、ドクンと激しく鳴り響き、画面が脈打つ演出は、プレイヤー自身の恐怖心を煽ります。

しかし、ただ逃げるだけではありません。石ころを投げて音で注意を逸らしたり、看板の裏や茂みに隠れてやり過ごしたりと、パズル的な攻略要素も楽しめます。また、探索の舞台となる夜の街は、学校、商店街、田んぼ、林道など、日本人なら誰もが郷愁を感じる場所ばかり。昼間とは全く違う顔を見せる夜の街を、懐中電灯の細い光だけを頼りに進んでいく没入感は、他のゲームでは味わえない独特の体験です。

感想：ホラーの中に温かみがある不思議な世界観

僕はホラーゲームがあまり得意ではありません。プレイ前は「可愛い絵柄に騙されてはいけない、これは絶対に怖い」と身構えていました。確かに、突然の脅かしや生理的な嫌悪感を抱くようなお化けのデザインなど、ホラー要素はしっかり怖いものとなっています。

しかし、それ以上に「この先はどうなるんだろう？」「あの子たちは再会できるのだろうか？」というストーリーへの興味が恐怖を上回ります。ホラーが苦手でも先が気になる展開のおかげで、気付けば恐怖を乗り越えてコントローラーを握りしめていました。特に『深夜廻』における二人の少女の絆を描いた物語は秀逸で、恐怖の先にある結末を見届けたいという強い動機が、プレイヤーを前に進ませてくれます。

そして何より素晴らしいのが、本作全体を包む「温かみのある独特な世界観」です。夕暮れのチャイム、虫の声、古びた掲示板。恐怖の中にも、幼い頃に感じた「夏の夜の匂い」のようなノスタルジーが漂っています。ただ怖いだけでなく、どこか切なくて美しい。プレイを終えた後、怖さよりも心に残るのは、絵本を読み終えた時のような静かな感動でした。

総評：夜の静けさと物語に浸りたいあなたへ

『夜廻と深夜廻』は、単なる「死にゲー」や「ビックリ系ホラー」ではありません。失ったものを探す少女たちの小さな勇気と、夜の闇に隠された儚い物語を体験する、唯一無二のアドベンチャーゲームです。

アクションとしての難易度は少し高めな場面もありますが、リトライが非常に早いため、ストレスなく再挑戦できるのも好印象でした。ホラーが苦手な方にこそ、この「怖くて、悲しくて、愛おしい」夜の旅を体験してほしいと思います。部屋の明かりを少し落として、ヘッドホンをしてプレイしてみてください。きっと、忘れられない夏の終わりのような体験があなたを待っています。