映画『マイ・ブロークン・マリコ』感想と結末。永野芽郁の熱演から学ぶ、明日を生きるための処方箋

映画『マイ・ブロークン・マリコ』感想と結末。永野芽郁の熱演から学ぶ、明日を生きるための処方箋
この記事はだいたい 11 分前後で読めます。

こんにちは、yasuです。

ふとテレビから流れてきたニュースが、自分の日常を根底から覆してしまう。そんな経験をしたことはあるでしょうか。今回僕が紹介する映画『マイ・ブロークン・マリコ』は、まさにそんな衝撃的な場面から幕を開けます。親友の突然の死という、言葉では表せないほどの深い悲しみを抱えた主人公が、どのようにしてその絶望と向き合い、泥臭く明日への一歩を踏み出すのか。この作品は、観る人の心に強く残りながらも、最後には不思議と前を向く勇気を与えてくれる、とても大切な一本です。

世界中で共感を呼んだ原作と、本作のあらすじ

この映画の土台となっているのは、平庫ワカ先生が描いた同名の漫画です。SNSを中心に「とんでもなく心を揺さぶられる作品がある」と口コミで一気に広がり、文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞など数多くの賞を受賞しました。さらに日本国内だけでなく、世界10カ国語で翻訳されているようで、国境や文化を超えて多くの人の共感を集めています。監督を務めたのは、人間の細やかな感情を描くことに定評があるタナダユキさんです。監督自身が原作の圧倒的な熱量にほれ込み、どうしても自分の手で映像化したいと動き出したそうです。

物語の主人公は、ブラック企業で毎日身を粉にして働くOLのシイノトモヨ(永野芽郁さん)です。ある日、定食屋でご飯を食べていた彼女は、テレビのニュースで親友のイカガワマリコ(奈緒さん)が亡くなったことを知ります。マリコは子どもの頃から実の父親に暴力を振るわれ、大人になってからも周囲の人間からひどい扱いを受け続けてきた、心に深い傷を負った女性でした。

「どうして自分は彼女を救えなかったのか」。激しい後悔と怒りに突き動かされたシイノは、せめて親友の魂だけはあのひどい父親から救い出そうと決心します。そして、包丁を隠し持って父親の家へ乗り込み、マリコの遺骨を奪い取って逃走するのです。シイノは、生前にマリコが行きたがっていた海を目指し、遺骨を抱えて最初で最後の二人旅に出発します。

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永野芽郁さんと奈緒さんが見せる、魂を削るような演技

この映画を語る上で絶対に外せないのが、主演の永野芽郁さんのこれまでにない演技です。永野さんといえば、明るくてかわいらしいイメージを持つ方が多いと思います。しかし今作では、いつもタバコをくわえ、言葉遣いも荒く、足癖も悪いという、これまでのパブリックイメージを完全に覆す泥臭い女性を演じきっています。

役作りのための準備も本当に徹底されていました。普段は全くタバコを吸わない永野さんですが、撮影の数ヶ月前から美容タバコを日常的に吸うようにして、生活の中に自然にタバコがある状態を作り上げたそうです。美容タバコとは言え、日頃タバコを吸わない人にとってタバコを吸い続けるのはかなりの苦行だと思います。そんな苦労を重ねた結果、スクリーンに映る彼女は、まぎれもなく「シイノ」という一人の不器用な女性そのものでした。限界を超えて殻を破ったその熱演は、観る者の心をわしづかみにします。

そして、親友のマリコを演じた奈緒さんの存在も忘れてはいけません。現実の世界でもとても仲が良いというお二人の深い信頼関係が、スクリーンを通してそのまま伝わってきます。奈緒さんが見せる、今にも壊れてしまいそうな危うさと、その奥にある深い孤独。それを見るだけで、シイノがなぜ自分の人生を投げ打ってでも彼女を救おうとしたのかが、痛いほどよく分かります。

物語に寄り添う音楽と、窪田正孝さんの温かい存在感

映画をさらに魅力的にしているのが、音楽と周囲のキャラクターたちです。道中でシイノが偶然出会うマキオという青年を、窪田正孝さんが演じています。遺骨を抱えて身も心もボロボロになっているシイノに対して、マキオは不思議なほどの距離感で優しく接してくれます。彼の押し付けがましくない温かさが、張り詰めたシイノの心を少しだけほぐしてくれるのです。

劇中の音楽も、二人の心をとても繊細に表現しています。現在を泥臭く生きるシイノの生々しい感情はアコースティックギターの音色で、シイノの記憶の中にいるマリコの存在は、鉄琴の透き通った音色で奏でられています。こうした耳から入ってくる情報も、僕たちが深く映画の世界に入り込める理由の一つです。

また、エンディングテーマとして流れるThe ピーズの「生きのばし」という楽曲も、この映画には欠かせません。タナダ監督が「この曲以外に考えられない」と熱望して起用されたといいます。この歌は、「死にたい朝でも、とりあえず目覚ましをかけて明日まで生きている」という、人間の飾らない本音を歌っています。きれいに立ち直ることはできなくても、とにかく息をして一日をやり過ごす。そんな不器用だけれど力強いメッセージが、映画の余韻と完璧に重なり合います。

Warning

ここから先は、物語の核心に触れるネタバレが含まれます。

まだ作品をご覧になっていない方は、ここで前のページに戻るか、視聴後に改めてお読みいただくことをおすすめします。

二人分の牛丼と、海辺での泥臭い別れ

道中の食堂でのシーンは、この映画が持つ「生のたくましさ」を象徴しています。シイノは二人分の牛丼を注文し、傍らに置いたマリコの骨壺の前に牛丼を供えます。そして、牛丼を口いっぱいにほおばるのです。親友を失った深い喪失感を抱えながらも、お腹は空き、ご飯を食べて命を繋いでいく。その即物的で泥臭い姿は、僕たちに「生きていくことの強さ」を教えてくれます。

そして物語の終盤、まりがおか岬の断崖絶壁で、思いがけない事態が起きます。シイノは、近くで少女が暴漢に襲われている悲鳴を耳にするのです。生前、理不尽な暴力に苦しみ続けていたマリコの姿と目の前の少女が重なったのかもしれません。シイノは、咄嗟に抱えていたマリコの骨壺を振りかぶり、犯人に殴りかかります

その激しい衝撃で骨壺は砕け散り、マリコの遺灰は海風に乗って空へと舞い上がっていきます。自らの手で静かに海へ撒くような、予定調和の美しい別れではありませんでした。しかし、この衝動的でめちゃくちゃな行動こそが、シイノなりの究極の愛情表現なのだと僕は思います。他者からの暴力に縛られ続けていたマリコの魂を「反逆」という形で打ち砕き、本当の意味で自由にしてあげた瞬間でした。

日常への帰還と、明かされない最後の手紙

過酷な旅を終え、東京に戻ったシイノ。結局、ブラック企業を辞めることもできず、崖から落ちた怪我で松葉杖をつきながら営業に回っている痛々しいシイノの姿が胸をえぐります。過酷な旅で状況が変わるわけでもなく、理不尽な毎日はそのまま続いていくのです。

しかし、自宅のアパートに帰着した彼女の元に、思いがけないものが届きます。それは、遺骨を奪った際に実家に置き忘れてきたシイノの靴と、マリコが最後に遺した「手紙」でした。実父の後妻であるキョウコが、こっそりとドアノブに掛けてくれていたのです。

観ている僕たちは、その手紙に絶望の理由や恨み言が書かれているのではないかと身構えます。しかし、その手紙の内容がスクリーンに映し出されることは最後までありません。自室で手紙を読んだシイノが、ただ微かに微笑むように小さく頷くだけなのです。あえて観客に中身を見せないこの演出こそが、二人の間にしか分からない絆の深さを際立たせ、「マリコはシイノの中で確かに生き続ける」という温かい希望を感じさせてくれます。

賛否両論の評価。リアルな感想から見えてくる作品の魅力

インターネット上の感想や評価を見ると、「永野芽郁さんの演技に圧倒された」「ボロボロ泣いてしまった」という絶賛の声がたくさんあります。一方で、「重くてしんどい」「目を背けたくなるシーンがあった」という声があるのも事実です。

映画の中で描かれる暴力や心の傷といった表現は、確かに観ていて苦しくなる瞬間があります。しかし、それは決して観客を怖がらせるためではなく、マリコがどれほどの痛みを抱えて生きていたのかを嘘偽りなく伝えるために必要な描写なのだと思います。安易なお涙頂戴のストーリーにして視聴者を気持ちよくさせるのではなく、世の中の理不尽さや人間の弱さをそのまま包み隠さずに描いているからこそ、この映画は信用できるのです。きれいに整理されていない感情のぶつかり合いがあるからこそ、深く共感し、救われる人が後を絶たないのではないでしょうか。

まとめ:不器用でも、傷ついていても、明日を生きていくあなたへ

映画『マイ・ブロークン・マリコ』は、大切な人を失くした悲しみという重いテーマを扱いながらも、最後には「生きること」を力強く肯定してくれる素晴らしい作品です。主人公のシイノは、決して立派なヒーローではありません。不器用で、間違いもたくさん犯します。

僕たちの毎日は、思い通りにいかないことばかりです。時には心が折れてしまったり、取り返しのつかない後悔を抱えて夜眠れなくなったりすることもあるでしょう。そんな時は、ぜひこの映画を思い出してみてください。傷ついたままでも、心が壊れたままでもいい。とりあえず温かいご飯を食べて、明日へと命をつないでいく。その泥臭い一歩を、この作品はきっと優しく見守ってくれるはずです。まだ観ていない方は、ぜひ永野芽郁さんと奈緒さんの魂の演技を、ご自身の目で確かめてみてください。

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Wrote this article この記事を書いた人

yasu

yasu

YASU GAME LIFE CHANNELのyasu本人によるブログです。乙女ゲーム好きな実況者です。皆と居心地の良いストレスのない場所を作るのが目標です。今までの動画・ライブ配信のまとめだったり、日々の想いを綴ります。 ※当ブログはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を掲載することがあります。

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