『いつ恋』感想|ネタバレ|レシートの真実と「無駄じゃなかった」結末の意味

『いつ恋』感想|ネタバレ|レシートの真実と「無駄じゃなかった」結末の意味
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こんにちは、yasuです。

話題作や名作と呼ばれるドラマでも、放送当時はタイミングが合わず、見逃してしまうことがあります。僕にとって『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』は、まさにそんな作品でした。

タイトルから漂う、胸が締め付けられるような予感。それに少し身構えてしまったのかもしれません。しかし時を経て、配信サービスでこの物語に向き合ったとき、今だからこそ、この作品が必要だったのだと痛感しました。

今回は、脚本家・坂元裕二さんが紡いだ、東京という街で懸命に生きる若者たちの記録について綴ります。単なる恋愛ドラマの枠を超え、「うまくいかない人生」をどう肯定するかを描いた傑作です。前半は物語の核心には触れずに、その魅力をお伝えします。

「東京」に翻弄される若者たちの、息が詰まるほどのリアル

物語は、北海道の片田舎と東京をつなぐ、一台の引越しトラックから始まります。主演は有村架純さんと高良健吾さん。そして高畑充希さん、西島隆弘さん、森川葵さん、坂口健太郎さんという、今や主役級の俳優たちが、まだ何者でもない若者を演じています。

このドラマの空気感は、決してキラキラしたものではありません。描かれるのは、東京の華やかなビルの隙間にある、古びたアパートや過酷な労働環境です。

手取りが少ない介護職、ブラックな運送業。社会の歪みを一身に背負わされた彼らは、東京の片隅で必死に生きています。バスの待ち時間や、アパートで缶詰を開けるようなささやかな時間。そんなわずかな隙間で温もりを分け合う姿は痛々しくもあり、同時にどうしようもなく愛おしい。作り物ではない「生活の肌触り」が、画面の向こうから伝わってくるのです。

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幸せになってほしい。誰よりも優しく、不器用な二人

主人公の杉原音(有村架純さん)と曽田練(高良健吾さん)。二人に共通するのは、自分を犠牲にしてでも他人を優先してしまう「優しさ」です。

バスの座席を譲るように、自分の幸せの順番を譲ってしまう。言いたい言葉を飲み込んで、静かに微笑む。そんな二人が惹かれ合うのは必然でしたが、その優しさが災いし、二人の距離は近づいては遠のきます。

「好き」という言葉よりも、「生きていてくれてありがとう」という祈りに近い感情。見ているこちらが「もう十分頑張ったよ、報われてくれ」と願わずにはいられないほど、彼らの生き方は不器用で、美しいのです。

第一部と第二部。変わってしまった練と、変わらなかったもの

物語は2011年を描いた第一部と、5年後の2016年を描いた第二部に分かれています。

第一部で見せた、素朴で真っ直ぐな練。しかし5年後、東京の雑踏の中で再会した彼は、冷たい目をした別人のようになっていました。怪しげな仕事に手を染め、感情を殺して生きる練。東京という街が、心優しい青年をどう変えてしまったのか。

この変貌は衝撃的ですが、物語を追うごとに、その冷たさの裏にある「捨てきれない優しさ」が見え隠れします。人は環境によって変わらざるを得ない。けれど、魂の根底にある色は簡単には変わらないのだと、このドラマは教えてくれます。

Warning

ここから先は、物語の核心に触れるネタバレが含まれます。

まだドラマをご覧になっていない方は、ここで前のページに戻るか、視聴後に改めてお読みいただくことをおすすめします。

レシートとお酒が証明した、おじいちゃんの「生きた証」

物語の中で、最も胸を打つエピソードの一つが、練の祖父(田中泯さん)にまつわる真実です。

第二部、練が変わってしまった最大の要因は、認知症を患った祖父の介護と死でした。練のことを忘れ、罵声を浴びせ続ける祖父。練は心身ともに摩耗し、絶望の中で祖父を看取りました。

しかし、音と再会したあと、音が見つけた大量のレシートが、隠された真実を語り始めます。そこには連日、コンビニやホームセンター、スーパーなどでの何気ない買い物をした記録が残っていました。その中には、「お酒を2つ」買った記録も残っていました。

練は気づきます。祖父がお酒を2つ買うとき、それは「一つは自分が飲むため」、そしてもう一つは「畑の土に飲ませるため」だったことを。

認知症で孫の顔がわからなくなっても、罵声を浴びせるようになっても、祖父の中には「農業を営む人間」としての誇りと日常が、最期まで残っていたのです。彼はあの日々を、彼なりに必死に生きていた。

そのレシートは、練が感じていた介護の日々の虚無感を、「意味のある時間」へと変える救いの紙片でした。

最終回直前、神様を恨んだ「言えなかったサヨナラ」

第9話のラストから最終回にかけての展開は、多くの視聴者が言葉を失ったはずです。僕もその一人でした。

音は、今の恋人である朝陽(西島隆弘)からのプロポーズを受け入れ、共に生きていく決意をしていました。そして、心の中にいる練に対して、きちんとお別れを言うために会いに行こうとします。それは、音なりの誠実な「けじめ」でした。

しかし、その道中で音はひったくり騒動に巻き込まれ、階段から転落してしまいます。

二人が結ばれる直前ではありません。別れを告げて、それぞれの道を進もうとした矢先の事故です。自分の心に決着をつけようとした瞬間に、理不尽な暴力によって意識を奪われる。ドラマを見慣れた僕たちでさえ、「まさか、このままバッドエンドなのか?」「言いたかったサヨナラさえ言えずに終わるのか?」と、生きた心地がしませんでした。

この容赦のない展開こそが、坂元脚本のリアリティであり、だからこそ、その後に訪れる平穏な時間の尊さが際立つのです。

芳根京子さんが受け取った、未来へのバトン

第9話のラストから最終回、物語は一人の少女の登場によって、鮮やかに彩られます。芳根京子さん演じる明日香です。

彼女は、かつて北海道から不安を抱えて上京してきた「あの頃の音」そのものでした。東京という巨大なシステムの中で迷子になりそうな彼女を、音は見つけ、声を掛けます。

東京へ来た頃の自分と重なった部分もあったのでしょう。音が東京での過酷な日々を生き抜き、自分自身で見つけ出した答えを自ら肯定するような行動でした。苦しんだ人間だけが、次の誰かの光になれる。芳根京子さんの透明な存在感が、この物語が決して閉じた世界ではなく、次の世代へと続いていく希望であることを示していました。

「振り出しに戻った」のではない、その時間は無駄ではなかった

このドラマの結末は、決して派手なハッピーエンドではありません。音は東京での生活を引き払い、北海道へ帰ることを選びます。

東京で何かを成し遂げたわけでもなく、恋人と結婚したわけでもない。音は自嘲気味に言います。「結局、振り出しに戻っただけ」だと。

しかし、練はそれを真っ向から否定しました。

「東京で過ごした時間は、振り出しなんかじゃない」

辛いこともあったけれど、美味しいものを食べて笑ったこと、新しい出会いがあったこと。そのすべての経験が、今の音を作っているのだと練は語りかけます。場所は戻ったとしても、心は確かに変化し、成長している。

遠回りしたこと、失敗したこと、うまくいかなかったこと。そのすべてを「無駄じゃなかった」と肯定してくれるこの言葉は、あちこちで妥協や諦めを知ってしまった僕の心にも、深く染み渡りました。

愛とは、互いの過去と未来を肯定すること

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』。

二人の関係は、東京と北海道という距離でどう変わっていくのかはわかりません。前途多難であることは間違いないでしょう。しかし、互いの選んだ道を尊重し、過ごしてきた時間を全肯定するその姿は、どんなロマンスよりも深い愛で結ばれています。

人生に効率を求めがちな現代で、このドラマは「立ち止まること」「遠回りすること」の価値を教えてくれました。

もし皆さまが、「自分の過ごした時間は無駄だったのではないか」と不安に思う夜があるなら、ぜひこの作品に触れてみてください。練と音が、皆さまの過ごした日々をきっと肯定してくれるはずです。

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Wrote this article この記事を書いた人

yasu

yasu

YASU GAME LIFE CHANNELのyasu本人によるブログです。乙女ゲーム好きな実況者です。皆と居心地の良いストレスのない場所を作るのが目標です。今までの動画・ライブ配信のまとめだったり、日々の想いを綴ります。 ※当ブログはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を掲載することがあります。

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